大人の発達障害の特徴は?能力はあるのに仕事ができない社会人

うつ、発達障害
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社会にでると、学生時代に比べて関わる人の数が増え、様々な人がいることを実感することも多いかと思います。
その中には、能力はあるはずなのに全然仕事ができない人や、仕事でのコミュニケーションが取りづらく、何度言っても報連相(報告・連絡・相談)をしてくれない人などもおられるのではないでしょうか。
もしかするとそのような人の中には、発達障害の傾向がある方もおられるかもしれません。

この記事では、大人の発達障害について、実例を交えながら紹介していきます。
「この人は発達障害なんだ」と決めつけるのは推奨しませんが、そういう可能性も頭に入れておくことで、あなたが感じる疑問やストレスが少しは解消できるかもしれません。

また、「私ってなんでこんなにミスばかりなんだろ」、「なんでみんなを怒らせてしまうんだろ」と、自分自身で仕事にやりづらさを感じている人もおられるかと思います。
最近は「自分が発達障害ではないか」と、医療機関を受診される方も多いようですので、そのような方にも参考になれば幸いです。

能力がある≠仕事ができる

勉強ができると仕事ができるはまったく別

社会に出ると、様々な人がいて面白い反面、疑問に感じることも多いですよね。
筆者のまわりには有名大学を出ているわけでもないのに、めちゃくちゃ仕事ができる人もいれば、反対に一流国立大学を出ているのに仕事をうまく進められない人もいます。
社会人になって10年以上が経過しますが、学歴や能力と仕事ができるできないは、必ずしも一致しないということを時おり感じます。

一流企業であれば、入社時にある程度の学歴がなければ採用の条件にひっかからないというケースもあります。
ですが、あれはあくまで「うちの仕事をするには、最低限これくらいの能力は必要だよ」というハードルを設けているだけ。
もちろん学歴が条件に見合わない人でも、その能力をもっている方もおられますが、学歴で絞ってしまった方が能力に対する条件クリアの可能性が高くなるからです。
面接などでしっかりと人を見ておかなければ、「勉強はできるけど仕事ができない人」ばかりという状況にも陥りかねません。

コミュニケーションがとれる人か

一定の能力があるという前提で、仕事をするうえで重要なのが必要なコミュニケーションがとれる人かどうか。
むしろ自分に能力がなくても、上手にコミュニケーションをとってまわりの人と協力しながら仕事を進められる人のほうが、学歴はあるけど必要なコミュニケーションをとってくれない人よりも重宝されます。

「なんでこの人は」と感じるような、仕事で報連相などのコミュニケーションをとってくれない人、相手の意思をうまく汲み取ってくれない人、聞き手の気持ちを考えないプレゼンをする人があなたのまわりにもおられるかもしれません。
そのような方の中には、発達障害の傾向があり、本人には悪気がまったくないケースも多々あります。
以下では、大人に見られる発達障害がどのようなものか、その特徴などと併せて解説していきます。

発達障害とは

症状は大人でも見られる

発達障害は先天的に脳の一部の機能に障害があるために起こるとされていますが、はっきりとした原因は現代でも解明されていないのが実状です。

近年では、保育や学校教育の世界などで「自閉症」や「多動」といった言葉が聞かれ、発達障害という言葉や症状自体が世間一般に浸透してきました。
ただし、昔は発達障害という考え方が一般的でなく、そのような症状がある人に対しては「ヘンな子」、「変わってる子」といった見られ方をしていました。
そんな人たちが今は大人になって社会に出ており、発達障害は子ども特有の症状と考えている人も多いため、誰からも指摘されることなく、本人にはまったく自覚がないというケースも多いですね。

一方で、発達障害というものが広く認識されるようになり、関連の書籍も多く出版されていることから、「自分も発達障害なのかも」と疑い、医療機関を受診される方も増えているようです。
医療機関で受診される方の中には「昔から生きづらさを感じていた」、「どうしても人とのコミュニケーションがうまくいかない」ということの要因を発達障害に求める大人も多いようですね。

ASD、ADHD、LDなど

一言で発達障害と言っても、その傾向は様々です。
また、医療機関で受診しても、「この傾向があるから障害がある」と一概には決まらず、グレーゾーンと判断される方も多いようです。
生活に支障をきたすほどではなくとも、誰でも多少は傾向が見られるというポイントもあるかと思います。

発達障害の分類で主だったものは自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など。

自閉スペクトラム症(ASD)の傾向としては、コミュニケーションが苦手で対人関係がうまくいかなかったり、特定のものに極端なまでのこだわりを持ったりするケースが見られます。
自閉スペクトラム症(ASD)には自閉症と呼ばれるものやアスペルガー症候群というものも含まれています。
アスペルガー症候群などは、共感性が欠如していて人の気持ちを汲み取ることや、その場の空気を読むことが苦手だったりします。

注意欠如多動性障害(ADHD)は、傾向として不注意でミスが多い、集中力がなく衝動的な行動をとってしまう、などが一例として挙げられます。
学生時代に席にじっと座っておくことができず、授業中でも立ち歩いている子が周囲にいたという方も多いのではないでしょうか。
また、お子さんのいる方であれば、落ち着きがない、じっとしていられない子に対して「多動」という言葉を聞いたことのある方もおられるでしょうか。

学習障害(LD)は、小学校低学年でも学校の授業についていけないほど読み書きや計算が苦手というケースが挙げられます。
知的障害とは違い知的な発達には問題がないことが多く、支援学級などには行かず、それでも学校の授業にはついていけないため、苦労するお子さんが多いようです。
もしお子さんに対して学校等から支援学級を勧められた場合、「うちの子がそんなはずない」という親のエゴは捨て、十分なサポートを受けられる支援学級で授業を受けさせることが推奨されています。

発達障害を知るためにオススメの2冊

ここでは発達障害を知る上でオススメの本を2冊紹介します。
いずれも実例が多いために読みやすく、読み始めると知らないことも多いため、どんどん読み進められるかと思います。
1冊でも読めば、発達障害に関して「そういうこともあるんだな」と、かなり理解が深まりますよ!

発達障害

最初に紹介するのは文春新書より発刊されている「発達障害」。
著者は東京大学医学部を卒業後、発達障害の臨床研究などを専門として現在、昭和大学医学部で主任教授を務めておられる岩波明さんです。

本書では、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群などについて、事例を交えながら非常にわかりやすく紹介されています。
発達障害を知る上での入門書としては非常にオススメの一冊。

発達障害は遺伝するのか、うつ病として治療を受けていたけど実は発達障害だったなど、知っておきたい事例も多く紹介されています。
子どもをもつ親御さんはもちろん、社会に出て「この人明らかにヘンやな」とか「自分自身、生きづらさを感じる」と感じることのある人も読んでおいたほうがいい一冊ですよ!

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発達障害「グレーゾーン」

2冊目に紹介するのは「発達障害グレーゾーン-その正しい理解と克服法」。
著者は、京都大学医学部卒の精神科医 岡田尊司さんです。

本書では、明らかな障害ではないけどグレーゾーンと呼ばれる方について、様々な事例が紹介されています。
社会に出てから発達障害との診断を受けたという大人の事例も多く、社会のなかで同僚や自分自身に対して「あれ?」と思うことがある方は、読んで損のない一冊。

紹介されているケースも、発達障害でよく言われる自閉症や多動と呼ばれるものだけでなく、よりイメージしやすい内容で書かれています。
例えば「こだわり症」、「空気が読めない人」、「共感するのが苦手な人」、「ひといちばい過敏な人」など、誰もがまわりに思い当たるケースで分類されています。

「そういうのも一種の発達障害なのか」というものも幅広く紹介されており、グレーゾーンは問題があまり表ざたにならないために、その問題がおざなりにされて大人になったケースも多々あることがわかります。
大人の発達障害に理解を深めるためにオススメの一冊です!

大人の発達障害の特徴

ここまで、一般的な発達障害の傾向や、発達障害を知る上でオススメの書籍をご紹介してきましたが、ここからは発達障害の傾向が強い方が社会にでた場合にどのような特徴が見られるかを紹介していきます。
筆者は職場で実際に、同僚から「医者に発達障害の診断を受けた」と告白を受けたこともあるため、職場での実例なども踏まえて、その特徴を紹介させていただきます。

仕事でのコミュニケーションが苦手

発達障害とされる方には、コミュニケーションが苦手な方が多くおられるようです。
社会に出ると「報連相(報告、連絡、相談)を大切に!」とよく言われますが、これらが疎かになりがちで、周囲の方が困るといったケースが多いですね。

「それはまわりにちゃんと伝えておいてくれないと!」と言いたい重要なことでも、しっかりと伝えてくれない。
立場が上の人であっても、部下に会社の情報がちゃんと伝わっていないなど、あなたの職場でも思い当たる方がおられるのではないでしょうか。
そういった方がみんな発達に障害があるというわけではありませんが、ひとつのサインになるかもしれません。

興味の範囲が限定的

興味のある仕事にはとても積極的だけど、そのほかの業務には見向きもしないという、興味の範囲がとても限定的という傾向も発達障害のなかにはあるようです。
事例として、小さなお子さんで大好きな特定のことになると、周囲や時間のことを忘れて没頭してしまうというケースを聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

先に紹介した「コミュニケーションが苦手」というのとは相反して、自分の得意分野になれば会話が止まらないほど喋ってしまうという方がときどきおられますよね。
一方で、自分が興味のない分野だったり、苦手なことについては極端に口数が減る。
発達障害の方にはこのような傾向を示す方もおられます。

時間の概念が希薄

発達障害の方のなかには、時間の概念が希薄という方もおられるようです。

例えば、期限が決まった仕事であっても、自分の納得いかない状態であれば、締め切りギリギリでも部下に無茶な指示をする。
また、約束した時間に対して余裕をもった行動をしないというケースもありますね。
プレゼンテーションの場面で決まった時間を守らない、時間を過ぎていても焦らないという方もおられます。
結果的に期日や時間を守れなかったとしても、「次からは余裕をもって」とはならないようです。

社会人になると、期日や時間を守らなければいけないことが当然多く、場合によっては会社に損失を与えることにもなりかねません。
このような方が上にたつと、部下の方などはとても苦労することが目に見えていますよね。

アドリブに弱い

先に紹介した「コミュニケーションが苦手」にも通ずるところがありますが、アドリブでの対応が苦手という傾向も多少なりとも見られます。

例えば質疑応答で自分の想定していなかった質問がでた際、用意していた回答をむりにして、質問と回答の辻褄が合わないなど。
仕事の経験の少ない方であれば十分に理解できておらず、質問に対して苦しい回答をするというケースもあるでしょうが、かなりの経験を積んでいる方でもうまく受け答えできないというケースも多々あります。
また、技術的なことでなく、事務的なことでも、突発的なことに対して柔軟に対応するということが難しいようです。

まわりの対応は?

では、職場などにそういう方はおられる場合、まわりはどのような対応が求められるのでしょうか。

まずは筆者のように、当事者から「発達障害と診断された」と告げられた場合。
この場合は周囲も理解を示しやすく、その人の適正にあった仕事をさせてあげるのがよいのではないでしょうか。

筆者に「発達障害」と告白された方は、その後、他部署に異動し、異動先ではとてものびのびと仕事をされているようです。
時おり筆者が顔を出した際もリラックスした様子で世間話をいろいろとしてくださるので、異動先の仕事がご自身に合っていたのではないかと感じています。
周囲も「ある分野ではあなたを信頼してますよ」という姿勢を見せることで、「発達障害」という劣等感を感じている方にも働きやすい環境を整えることができるはずです。

一方、難しいのは、発達障害の傾向があるけど本人に自覚がなく、もちろん診断なんか受けていないケース。
同僚や上司の立場から、本人に「発達障害の診察を受けてみれば」というのは難しく、自信を失って仕事を続けられないなんてことも考えられます。
ご家族、お子さんがいる方であれば、家庭の生活に影響を与えてしまう恐れもありますよね。
なにかきっかけがあって、ご家族からその可能性について伝えていただくのが良いのでしょうが、それもなかなか難しいですよね。

職場の対応としては、その人の適正を見て、上司等が適切な判断を下すことかと思います。
例えば、明らかに管理職としての適性がないのに、ある程度の年齢になったから部署のリーダーに昇格させると、まわりの人間が苦労することとなります(これは発達障害の人に限らないことですが)。
発達障害の傾向がある方は、新しい取り組みやコミュニケーションが苦手な方も多いため、部署の発展や新規業務の開拓などが難しく、リーダーにもかかわらず、周囲の人間から取り残されるなんてケースも実際に見られます。

社内で上司等との面談が定期的にあるようであれば、その人の苦手な分野、得意な分野をしっかり伝え、適切な業務を与えるのがいいですね。
少なくとも本人に「あなた発達障害でしょ」などと、専門家でもないのに決めつけで言うのは避け、その人に合った仕事ができる環境を整えるべきでしょう。

おわりに

必要な情報を伝えてくれない人、なかなか期限を守ってくれない人など、こちらの思ったように仕事をしてくれない人がいると、仕事がうまく進まず、ストレスを抱えてしまったりしますよね。
そのような方でもコミュニケーションがとれればいいのですが、なかなかコミュニケーションをとってくれないとなると、さらに問題が悪化しそうです。

職場や取引先にそのような方がおられる場合、「発達に障害があるのかも」ということを可能性の一つにいれることで、ご自身のストレスも多少軽くなるかもしれません。
ご自身の思い込みで決めつけてしまうのは良くないですが、そういう人もいるんだな、くらいで割り切ってしまうのがいいかもしれませんね。
また、職場としても、その人に合った仕事や環境を整えてあげることで、周囲の環境改善にもつながるかもしれません。

これを機に発達障害に関する書籍を読んでみて、理解を深めるのも、ご自身の視野を広げることにつながり、あなた自身の人生がよりよいものになりますよ!

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