- はじめに、マインドセットとは
- つまずきそのものを楽しむ人間がいるなんて。そもそもつまずくことを失敗とは考えておらず、何かを学びとるチャンスだと思っている。
- 宇宙飛行士候補生を募るときに、順風満帆の人生を歩んできた人は採用せず、大きな挫折体験からうまく立ち直った人を採用するようにした。
- 気が滅入れば滅入るほど、ますます意志を強く持とうと奮起していたのだ。
- しなやかなマインドセットの学生は、学習意欲をかきたてる方法を自分で工夫していた。
- 能力を褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると知能が上がった。
- 周囲にできるかぎり有能な人材を集め、自らの過ちや欠点をしっかりと見据え、将来自分や自社にとって必要となるスキルは何かを率直に問い続ける。
- おわりに
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はじめに、マインドセットとは
こんにちは、ロア(@roa_garnet)です。
今回は、草思社より出版されている書籍『マインドセット「やればできる!」の研究』について、心に残ったフレーズを紹介いたします。
著者は、スタンフォード大学で心理学の教授をされているキャロル・ドウェック女史です。
タイトルにあるマインドセットとは、本書の中では「心のあり方」と定義されており、「自分の性格だと思っているものの多くが、じつはこのマインドセットの産物なのである」とされています。
書籍の中でマインドセットは「硬直マインドセット」と「しなやかなマインドセット」の大きく二種類に分けられています。
「硬直マインドセット」の人は、「自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人」、「自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない」人とされています。
一方、「しなやかなマインドセット」の人は、「人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念」を持っているとされています。
つまずきそのものを楽しむ人間がいるなんて。そもそもつまずくことを失敗とは考えておらず、何かを学びとるチャンスだと思っている。
これは著者が研究者になって間もない頃、子どもたちに難しい問題(パズル)を与えて、取り組む姿勢を観察した際に感じたことです。
しなやかなマインドセットを持った子どもは難しい問題に対して「ぼく、なかなか解けない問題って、だいすき!」や「このパズルをやると頭が良くなるよ、きっと」と言いながら、問題に取り組んだようです。
硬直マインドセットの子どもであれば、自分の能力に疑念を抱きたくないため、解ける問題しかやらなかったり、解けないとわかった時点でふて腐れたりするでしょう。
この点に関しては、私自身、学生時代は硬直マインドセットの傾向があったように思います。
お子さんのいる方であれば、自分の子どもには難しい問題でもどんどんチャレンジしてくれる子どもであってほしいと思ってしまうのではないでしょうか。
宇宙飛行士候補生を募るときに、順風満帆の人生を歩んできた人は採用せず、大きな挫折体験からうまく立ち直った人を採用するようにした。
これはNASAが宇宙飛行士の候補生を募る際の選び方の話です。
本書では、「潜在能力」に関する記述があり、潜在能力とは「最初からキラリと光るもの」ではなく、「こつこつと時間をかけて自分の技能を伸ばしていく能力のことではないのか」とされています。
順風満帆の人生を歩んできた人は、「最初からキラリと光るもの」の道を選び続け、失敗や努力を経験していない恐れがあります。
そのような場合、失敗したり、努力が必要な場面に陥った場合、立ち直ることができるのでしょうか。
それよりも、すでに挫折を経験し、そこからうまく立ち直り、「こつこつと時間をかけて自分の技能を伸ばして」きた人のほうが、しなやかなマインドセットを持っていると考えられます。
私の好きなサッカーの世界でも、早熟の天才と言われ、順風満帆と考えられていた選手がいつの間にか表舞台から消えていたというケースは多々あります。
天才などともてはやされると、プライドが邪魔をして、努力から遠ざかってしまうのかもしれません。
気が滅入れば滅入るほど、ますます意志を強く持とうと奮起していたのだ。
大学教授である著者が、冬場(2月〜3月)に大学に蔓延する抑うつ(気分が落ち込んで何にもする気になれないような精神症状)において、対処の仕方が学生によってまったく異なることに注目したようです。
学生たちにその期間中の3週間、オンライン日記をつけてもらう実験をしたところ、マインドセットによる抑うつに対する対処の仕方に差が見られたとのことです。
硬直マインドセットの学生は、自分の問題点や失敗が頭から離れず、失敗したのは自分が無能で役立たずの証拠だという思いを抱いたようです。そして、問題解決の手段を講じようとしなくなっていくようです。
一方、しなやかなマインドセットの学生は、暗い気分に陥る中で、『気分が落ち込めば落ち込むほど、なおいっそう問題解決の手立てを講じ、勉強に遅れないように注意し、身のまわりのことに気を配っていた」ということです。
人間誰しも気分が落ち込むことはあるかと思います。
その際にどのように対処するか、このしなやかなマインドセットの学生の例は頑張って真似したいと感じます。
しなやかなマインドセットの学生は、学習意欲をかきたてる方法を自分で工夫していた。
ここでも大学の学生が実例として紹介されています。
試験勉強では、学生時代に特に文系の科目などで「丸暗記」する方もおられたかと思います。
それに対してしなやかなマインドセットを持つ学生は、「やみくもに丸暗記するのではなく『講義全体のテーマや基本原則をつかむ』努力をし、『ミスしやすいところは完全にマスターできるまで反復学習』した」と紹介されています。
「試験で良い点を取ることにではなく、しっかりと理解することを目標に置いていた」ともされています。
これはぜひ自分の子どもに伝えたいですね。
子どもの勉強だと、どうしても良い点をとることに注視しがちですが、本質はテストで点を取ることではなく、学習を理解することですよね。
勉強に対する親の持っていき方にも注意が必要と感じます。
能力を褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると知能が上がった。
ここでは、思春期初期の子どもを対象に実験が行われています。
かなり難しい問題を10問解かせ、「頭がいいのね」と能力を褒めるグループと、「頑張ったのね」と努力を褒めるグループに分けられています。
その後さらに問題を選ばせると、能力を褒められたグループは、その直後から新しい問題にチャレンジするのを避け、学べるチャンスを逃すこととなったようです。
一方、努力を褒められたグループは、その9割が新しい問題にチャレンジし、学べるチャンスを逃さなかったということです。
これも子どもを持つ親御さんや教師の方は注意が必要ですね。
子どもが問題を解けたときに「頭いいなぁ」とかは言いがちですよね。
気をつけて努力を褒めるようにしなければ、子どもは頭が悪いと思われるのを恐れ、チャレンジしなくなりそうです。
周囲にできるかぎり有能な人材を集め、自らの過ちや欠点をしっかりと見据え、将来自分や自社にとって必要となるスキルは何かを率直に問い続ける。
本書ではスポーツやビジネスの実例もいくつか紹介されており、このフレーズはビジネスでの話ですね。
ここにある「周囲にできるかぎり有能な人材を集め」というのは、それなりの役職のある方の中では、避けている人も多いのではないでしょうか。
周囲に有能な人がいれば、自分の成長につながりますし、組織としてもメリットの大きいことですが、どうしても自分の立場を脅かされるのではないかといった恐れを抱き、まわりをイエスマンで固めている方を私は思い浮かべてしまいます。
またサッカーの話になってしまいますが、2019年に欧州チャンピオンとなった英国のチーム、リバプールの監督クロップ氏は、自分で獲得した選手を根気強く、長い目で使い続ける面があり、選手からの信頼が厚いですが、スタッフとも強力な信頼関係で結ばれています。
というのも、彼はモチベータータイプの監督であることを自認し、戦術などの面に関し、自分よりも優秀な人間をどんどん登用しているようです。
自分の立場が危ぶまれると考えていてはできないことですが、確固たるリーダーシップと自信があれば、組織(チーム)のためにこのような選択をし、結果を出すことができるのでしょう。
自分に自信を持ち、組織のための選択ができるというのは、見習いたいところです。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本書は、自身の成長を望む方だけでなく、子育てに励まれている方にも参考になる書籍と感じています。
いくつか本書の内容を紹介しましたが、あくまで一部の抜粋です。
「しなやかなマインドセットでありたい」とか、「子どもにはしなやかなマインドセットであってほしい」と思われる方は、ぜひ一度、本書を読んでみてください。