建築物の構造関係技術基準解説書(黄色本)をフル活用できる使い方を紹介

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建築の構造設計の仕事をされている方の中には「建築物の構造関係技術基準解説書」(通称、黄色本)を持っているけど「ほとんど使っていない」「分厚すぎて中身を把握できていない」という方も多いのではないでしょうか。

黄色本は800ページ程度で構成され、一つの構造種別に対して様々なページに記述が散りばめられているため、非常に読みづらい書籍かと思います。
また、構造計算適合性判定(適判)の仕事をされている方でもないと、内容の端々まで把握しておく必要性も感じられないため、「とっつきづらい」「本腰を入れて読む気になれない」と感じる方も多いかもしれません。

ロア
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構成もわかりづらいし取り組むのに気合がいりますよね。

ですが、本書籍は5年から10年のペースで改訂され、最新の情報に更新され続けています。

本書籍は法令に関する内容ばかりではなく、技術者として知っておきたい最新の知見や過去の被害事例に関する記述なども多く含まれているため、どこかのタイミングで時間を確保して内容を把握し、業務で活用できるツールにすることをおすすめします。

本稿では、黄色本を活用する上で最低限行っておきたい作業をお伝えしています。
筆者はこの方法に基づき黄色本全体の内容を把握し、構造計算適合性判定資格者検定にも一発合格することができましたので、構造設計者の方の参考になれば幸いです。

□本稿の対象読者
・構造設計者としての成長のために黄色本をフル活用したい方
・将来的に適判資格者検定に合格したいとお考えの方

書籍の構成

  • 第1章 序章
  • 第2章 構造関係規定の構成及び要求性能
  • 第3章 構造細則
  • 第4章 構造計算による安全確認
  • 第5章 荷重及び外力
  • 第6章 保有水平耐力計算等の構造計算
  • 第7章 限界耐力計算
  • 第8章 その他の構造計算
  • 第9章 許容応力度及び材料強度
  • 付録1 構造関係規定に関する技術資料
  • 付録2 既存建築物に関する構造関係規定の適用

本書籍は上記の9章と2つの付録からなります。

この書籍のやっかいなところは、一つの構造種別であっても「3章 構造細則」に記述されていたり、「6章 保有水平耐力計算等の構造計算」に関係する記述があったり、また重要なことが「付録1 構造関係規定に関する技術資料」に記されていたりと、関連する記述が書籍のいたるところに散りばめられている点かと思います。
そのため、本書籍をフル活用しようとすると、何がどこに記述されているかを時間をかけて把握する必要があります

ロア
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RC造だけでもいろんなところに大事な情報が書かれてて探すの大変ですよね。

時間が必要

筆者は本書籍を隅から隅まで読み通すために毎日1時間、半年ほどの期間を要しました
途中、頻繁に書き込みをしたり関連する法令を書籍内から探したりしながらなので、単に読み進める以上の時間を要しました。
適判の仕事をしている方など、黄色本に慣れている方でもない限り、「この告示はどこにあったっけ」、「前もこの告示みたけどどこに書いてたかな」とあちこち確認しながらの作業になるかと思います。

ただし、「業務では鉄骨造、鉄筋コンクリート造しか扱わないから、そこだけでいい」という方は数ヶ月の短縮が可能です。

その場合でもページ数としてはかなりのボリュームがあるため、毎日コツコツ、時間をかけて目を通していく必要があることには変わりありません。

ロア
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「仕事で使うところだけを重点的に勉強する」でもいいかもしれませんね。

具体的な作業

ではここから、具体的にどのような作業が必要かを紹介していきます。

主に必要な作業は以下の3つです。

  • インデックス貼り
  • 線引き
  • 関連ページの書き込み

インデックス貼り

黄色本を活用するのであれば「インデックスがなければ始まらない」といっても過言ではないでしょう。
必ず最初に行ってほしい作業です。

しっかりと使えるインデックスにしようとすると、インデックス貼りだけで1,2時間はかかります。

インデックスを貼るとなると「目次に沿って貼ればいいんじゃないの?そんな何時間もかかるの?」と思う方もおられるかもしれません。
ですが、ここで行ってほしいのは「使えるインデックスを貼ること」です。
目次通りに貼るだけであれば目次を見ればいいのであまり有効ではありません。

例えば「液状化」や「特定天井」といったキーワードは、必ずしも目次に明記されている場合ばかりではありません。
「こんなところにこれの記述があったんだ」と思うときもあるので、一通り書籍の内容を目で追いながら、キーワードを見つけたらインデックスを貼っていくべきです。

黄色本はかなりのボリュームがあるにも関わらず索引がないため、一度見落とすとあとから「柱梁接合部のあの記述はどこだったっけ」と見つけ出すことが難しくなります。

必ずしも目次に沿わず、ご自身の経験から必要、重要と考えるキーワードを見つければインデックスを貼っていくという方法をおすすめします。

最初にしっかりしたインデックスを貼っておけば、あとの作業時間がかなり短縮されることとなります。

ロア
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インデックスがあるだけで格段に使いやすくなりますよ!

なお、複数色のインデックスをお持ちであれば、インデックスの色を使い分けることも有効です。
筆者は見分けが付くように、6章と付録の部分だけはインデックスを違う色にしています。
例えば「この部分だけ色を変えておこう」「構造種別に色を分けておこう」など、ご自身の使い方で色を使い分けると、より使いやすくなるはずです。

また、インデックスを貼る位置も、大見出しは書籍の横に、小見出しは書籍の上に貼るなど工夫することで、まず大見出しのところにさっと飛んで、そこから小見出しに飛ぶという方法も可能です。
すべてのインデックスを書籍の横に貼ると、インデックスが多くなるため、目的の項目が探しにくくなる恐れもあります。

いずれにせよ、ご自身の使い方に合わせて、インデックスを有効に活用することが黄色本を使いこなす第一歩となります。

ロア
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インデックスの色や位置を工夫すればさらに使いやすくなりますよ!

インデックスを貼るだけで格段に使いやすくなります
インデックスの色を使い分けるのも有効です

線引き

インデックス貼りができれば、ご自身が内容を把握しておきたい章や節を読み込んでいきます。
黄色本は順を追って読まなくとも、その章その章を単独で読めばある程度理解ができるため、把握しておきたい箇所や優先順位の高い箇所が決まっているのであれば、そこから進めていただければいいかと思います。

章や節ごとに重要、見落とさないようにしておきたいという箇所にペンやマーカーを使って線引きをしていきます。
その際に、それぞれのペンやマーカーの色分けにルールを決めておけば、さらに使いやすいものとなります。
筆者は、見落としたくない箇所は黒の下線、重要な箇所は赤の下線、ただし書きなど否定の文章は青の下線、見落としたくないキーワードは黄色のマーカーといった具合にペンを使い分けています。

法令関係の文章の場合、言い切った後に、「ただし」と否定や除外の文章が入ることが多いです。
このあたりは青線などで色分けをしておかないと見落としてしまう恐れがあります。
「この場合はこの対応を省略できたのに把握してなかった」となるともったいないので、自分なりにルールを決めておくのが重要です。
「ただし」や「かつ」といった文言を丸で囲むだけでも有効です。

なお、注意が必要なのが線の引きすぎ
どこもかしこも線だらけになると、どこが重要なのかがわからなくなってしまいます。
「ここは主要な項目だから線が多くなりそう」と思う箇所は、線を必要最低限にしておくのがよいかと思います。

ロア
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私は見落としを防ぐために写真のように□や○を使ったりしてます。

ペンの色やマーカーを使い分ければ見落としも防げます

関連ページの書き込み

線引きで内容を読み込んでいく際に併せておこなってほしいのが関連ページの書き込みです。

黄色本の解説文を読んでいくと「告示○○による」など、他の箇所に詳細が飛ばされることがあります。
その際に「その告示はどこにあるんだ?」と探し回って時間を無駄にすることも多々あるかと思います。

そのため、次に読む時のために「告示○○」という記述の下に小さく「P○○」と、関連ページを書いておくことをおすすめします。
めんどくさいなと思いながらも、次に読む時の時間短縮を思えば、最初に読んだ際に行っておくべき作業です。

ロア
ロア

文章中に告示○号とか令○条と書かれてもどこにあるのかわからないんですよね。

何度も出てくる関連事項であればそのうち覚えられそうですが、そうでないものも多いので、細かに記述を残しておくべきと考えます。

なお、目次の後には各告示などが掲載されている章、節が一覧にまとまっている箇所がありますが、その中では追いきれないケースも多々ありますので、面倒でも細かに記述しておくべきです。

関連の告示や法令の下にページを書き込めば探す時間が省けます

おわりに

「建築物の構造関係技術基準解説書」(黄色本)は、情報量が多く、法的な読みづらい文章が大半を占めるため、すべてを理解しようとすると、半年や一年といった時間を要します。

一方、その豊富な情報を把握し、「このことはあそこに書いてたな」と、すぐに思い出せるようになれば、様々な利点が得られます。
黄色本に書いているのに知らなかったというだけで、検討の省略や建設コストの削減の機会を失ってしまう可能性も多々あります。

まずはインデックスを貼るところから始め、全体の流れを掴むだけでも有効な武器になるかと思います。
非常にとっつきづらい書籍ではありますが、構造設計を仕事とする上では、時間をかける価値のある書籍には違いありません。

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