はじめに
こんにちは、ロア(@roa_garnet)です。
私は大学では建築学科で建築のことを学び、今は一級建築士の資格をもって構造設計の仕事をしています。
ですが大学に通い始め、二回生ごろまでは「建築にはいろんな仕事があるけど何やろうかな」とか「具体的に何がやりたいか決まってないな」という感じで、今思うと非常にぼんやり大学に通っていたな感じます。
ただ、大学生や専門学校生の中には私のように、その分野には所属したいけど、その中で具体的に何をしたいかとなるとイメージできていない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、一級建築士を取得し、構造設計を中心に様々な職種の方と仕事をしてきた筆者が、建築の職種やその内容を紹介します。
・建築業界の職種や内容に興味のある方
建築士とは、設計士とは
まずはよく聞かれる「建築士」と「設計士」の違いです。
私は国家資格である一級建築士の資格を取得し、構造設計という分野の仕事をしていますが、妻がご近所さんに「旦那さんは設計士さんなの?」とよく聞かれるようです。
建築に関わりのない方にとっては、建築士よりも設計士の方がイメージしやすく身近に感じるようですが、設計士というのは資格でもなんでもなく、単に設計業務をしている方の呼称のようなものです。
建築物を設計するには、一級建築士や二級建築士、木造建築士などの資格が必要ですが、それらの資格を持たずに設計補助をしている方でも設計士と呼ばれることもあります。
建築士の仕事は幅広い
建築士の仕事をしている=設計をしているとイメージされることが多いですが、これは大きな勘違いです。
建築士の仕事は本当に幅広いため、どのようなものがあるか、主要なものを紹介させていただきます。
設計
一言に設計といっても、意匠設計、構造設計、設備設計という大きく三つの分野に分かれます。
ちなみに、構造設計と設備設計に関しては、一級建築士より高度な資格として、構造設計一級建築士および設備設計一級建築士という資格もあります。
- 意匠設計:依頼者の要望に合わせて間取りやデザインを設計します。一般の方が設計士と呼ぶのは、この職種のイメージですね。
- 構造設計:地震や台風、積雪などの力や、建物自身の重さに対して、建物が健全な状態を保つよう、柱の大きさや壁の厚さなどを設計します。
- 設備設計:建物が快適に使えるよう、建物の間取り、規模や用途に応じて、照明や空調、上下水などの設備の配管経路や容量を設計します。
現場
よく現場監督や施工管理(せこかん)呼ばれる仕事ですね。
設計の意図などを図面から読み取るとともに、設計者と十分なすり合わせを行い、設計されたものを現場で建設できるように調整します。
現場での作業の工程や方法を検討し、現場の職人さんたちに指示するなど、現場での知識に加え、職人さんたちとのコミュニケーション能力も求められます。
なお、現場の職人さんたちは、作業内容に応じた資格(溶接工など)をお持ちの方が多いですが、建築士の資格は必要ありません。
積算
設計された建物について、図面から材料のボリュームなどを全て計算し、その建物を実際に建てるために必要な費用を算出します。
建築士の資格をお持ちの方もおられますが、建築積算士という別の資格が求められます。
研究、開発
建築は様々な材料で構成されるため、研究、開発は幅広い分野があります。
以下に示すのはその一部です。
建築士の資格をお持ちの方もおられますが、研究成果を積み上げ、論文を書く機会も多いため、博士号の取得に進まれる方が多いようです。
- 構造:建物を構成する新しい部材や工法などを、実験や解析により研究、開発します。
- 材料:コンクリートや金属について、実験や分析を行います。コンクリート材料が不健全であれば、建物の劣化は早くなるため、重要な分野です。
- 防音、遮音:建物の防音性や遮音性を向上させるための材料を研究、開発します。
- 防火:火災が起きた際、火炎や熱に耐えられる時間が建物の場所ごとに決まっています。その条件をクリアできる材料を実験や解析により研究、開発します。
審査、判定
設計者が設計した建物が法的、技術的に適切なものかを第三者が審査、判定します。
建物の規模に応じて必要な審査や判定の内容が変わってきますが、確認検査機関など、審査、判定を業務とした第三者機関が行います。
また、図面通りに適切に現場で建設されているか、中間検査や完了検査といった現場での確認も行います。
新卒でこのような組織に就職される方もおられますが、多くの方は別の会社で設計の経験を積んだ上で、このようなところに転職されます。
調査、診断
すでに建っている建物の調査や、調査結果からその建物の状態を診断する業務です。
建物は長きにわたって存在するため、不具合や劣化が起こることもありますし、時には災害にあうこともあります。
そのような建物に対し、構造的、材料的な視点を中心に建物の状態を診断するため、様々な分野の知識が求められます。
以上が建築に関わる主な仕事ですが、その他にも専門的な仕事はたくさんあります。
また、上で紹介したものについても、必ずしも建築士の資格が要求されるものばかりではありません。
なお、一級建築士と二級建築士は設計できる建物の規模が違い、一級建築士はどんな建物でも設計できるのに対し、二級建築士は戸建住宅などの小規模なものに限られます。
この点は、一級建築士の免許が国土交通大臣から交付されるのに対し、二級建築士が都道府県知事から交付されるという点でも、影響力の差が見て取れます。
ゼネコンとは、設計事務所とは
ゼネコンと設計事務所ということばをよく聞かれると思いますが、ここではその違いを紹介いたします。
ゼネコンとは建築に関する業務を総合的に行うもので、設計や建設などを自社で行うことができます。
大きなゼネコンでは、先に紹介した設計、現場のほか、自社で技術研究所などを所有しており、研究、開発も積極的に行っています。
対する設計事務所は、その名のとおり、設計業務を行っています。
そのため、自社で設計した建物は、ゼネコンに建設作業をお願いすることとなります。
また、意匠、構造、設備を総合的に設計している事務所もあれば、いずれかの分野を専門的に業務にしている事務所もあります。
一級建築士が管理建築士をしている事務所を「一級建築士事務所」、二級建築士が管理建築士をしている事務所を「二級建築士事務所」と、管理建築士が所有している資格で事務所の呼び方も異なります。
建築を目指す学生の方へ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これまでに紹介したとおり、一言に建築といっても様々な職種があります。
建築の仕事を目指して大学や専門学校に通われている学生さんや、これから大学を目指す高校生にとって、建築のどのような分野を目指すかを明確にしておくことは、単位やゼミの選び方にも大きく影響してくるかと思います。
この記事でイメージを掴んでいただき、お役立ていただければ幸いです。