構造設計に携わられている方の中には構造計算適合性判定の資格取得を目指されている方もおられるかと思います。
筆者は平成30年度の試験を受験し、無事に一発合格しました。
この試験の受験をお考えの方の中には「試験の情報が全然ない!」、「過去問は公表されてるけど何を対策していいか全くわからない!」という方も多いのではないでしょうか。
筆者自身、一体何から準備すればいいの?って感じでした。
情報溢れる現代社会においてここまで情報が不足している試験も珍しいように思われます。
そのため筆者自身は過去の試験に合格した方に情報を聞きまわり、自分なりに何が必要かを考え、試験対策を行いました。
本稿では、まわりの受験者に比べると設計経験が乏しく(合格時31歳)、構造計算適合性判定の仕事に携わっているわけでもない筆者が独学で一発合格した試験対策を紹介いたします。
これから構造計算適合性判定資格者検定の受験を考えられている方の参考になれば幸いです。
なお、本稿は筆者が受験した時点での試験情報に基づき記載している点はご留意ください。
この記事の対象読者
・構造計算適合性判定資格者検定の受験をお考えの方
・試験に関する情報が少なくどのように試験対策をしていいか迷われている方
ちなみに別記事では、構造設計一級建築士の受験対策も紹介しています。
気になる方はあわせてチェックしてみてください。
構造計算適合性判定資格とは
ここでは構造計算適合性判定資格者検定に関する概要を紹介いたします。
「概要は知ってるからいいよ」という方は読み飛ばしていただいてかまいません。
構造計算適合性判定資格者検定の試験は3年に一度しか開催されず、合格率は20〜30%程度、また受験料も34,000円と安くないため、一度の試験に対するプレッシャーが大きいですよね。
加えて、一級建築士の資格を持ち、構造設計などの業務に対し合計5年以上の実務経験を有するということが受験資格となるため、受験者のレベルもそれなりに高いものと思われます。
私は居住地の大阪で受験をしましたが、試験当日はスーパーゼネコンの設計者など、顔見知りでもかなり能力の高い方が多数いて驚きました。
それでもしっかり準備できていれば筆者のように合格できますよ!
試験の構成
ここでは構造計算適合性判定資格者検定に関する概要を紹介いたします。
試験の構成もご存知の方は読み飛ばしていただいてかまいません。
試験は午前(2時間)、午後(3時間)の二部構成となっています。
午前は25問の四肢択一問題、午後は構造計算書や配筋詳細図に対する筆記や穴埋め問題です。
過去の試験結果を見ると、試験の合格ラインは正答率7割前後のようです。
試験には「建築関連法令集(以下、法令集)」、「建築物の構造関係技術基準解説書(以下、黄色本)」および関数電卓の持ち込みが許されています。
午前の四肢択一問題は技術的な問題に加え、構造計算適合性判定における事務手続き関連の問題も出題されます。
法令集や黄色本での対策が必須となります。
午後の筆記、穴埋め問題は、過去二回の試験では、一題目が鉄筋コンクリート造、二題目が鉄骨造の問題となっていました。
鉄筋コンクリート造は構造計算書、構造図、配筋詳細図を見て不適切な箇所を指摘する問題、鉄骨造は与えられた条件に対して構造計算書の穴埋めをしていく問題が出題されました。
なお、(一財)日本建築防災協会のHPにて過去問が掲載されており、四肢択一問題の回答も載っていますが、筆記、穴埋めの回答は掲載されていません。
合格のための勉強法
ではここから私がどのように試験対策を行ったかを紹介いたします。
筆者が取り組んだのは以下の5つです。
- ①法令集および黄色本の線引き、インデックス貼り、読み込み
- ②過去問の実施
- ③構造設計一級建築士試験の過去問の実施
- ④建築基準適合判定資格者検定の過去問(構造分野)の実施
- ⑤(一財)日本建築センター発行のビルディングレターなどの読み込み
私は②〜④を試験の半年ほど前から取り組みました。①は黄色本の作り込みだけで半年ほどかかりました。
法令集および黄色本の作り込み
①の法令集および黄色本の線引き、インデックス貼りはかなり時間を要する作業です。
黄色本については、筆者は試験以前にすべてのページを読み込みながら技術的に重要な事項やどこに書いてあるかを把握しておきたい項目に線引きし、大きな項目ごとにインデックスを貼っていました。
重要な事項は赤のアンダーライン、さらに重要な項目にはマーカー、否定の文章には青のアンダーラインをひくなど、自分なりにわかりやすいように色も使いわけて作りました。
この際に注意が必要なのはあまりたくさんの色を使わないこと。
色をたくさん使い、ページがマーカーだらけになると、どこが本当に重要かがぼやけてしまいます。
自分がその色の意味をすぐにわかるくらいの色数で適度に線引きを行うことをおすすめします。
また、法令の解説中に他の法令が出てきたときには、その法令が何ページに記載されているかを文章中にメモ書きし、すぐにそちらのページに飛べるようにしていました。
部材の設計、例えば柱梁接合部の設計などでも6章に記載があったり付録に記載があったりしますので、関連ページを書き込み、すぐに飛べるようにしました。
800ページ程度ある書籍ですので、全ページを作り込むのに半年ほどかけたことを覚えています。
黄色本がなければこの試験での合格はありえないため、お持ちでない方は直ちに用意しましょう。
最新の情報が望ましいため、2020年改訂のものを購入することをおすすめします。
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黄色本の作り込みについては、下記リンクで詳しく解説しています。
法令集については、構造計算適合性判定に関する部分のみ、準備しておけば問題ないでしょう。
ただし、一般的には法令編、告示編の2冊で構成されていますので、2冊ともに用意してください。
目次で構造計算適合性判定に関する箇所を探し、インデックスですぐに引けるようにしておき、重要な箇所に線引きを行うといった要領です。
法令の文章は非常に読みづらいため、肯定の文章は赤線、否定の文章は青線にするなどの色分けで工夫するのが効果的です。
構造計算適合性判定に関する箇所のみですので、所要時間は一週間前後で大丈夫でしょう。
法令集は適判のところだけでOK。
過去問の実施
②〜④の過去問については、適判の試験だけでなく、構造一級の過去問も実施しましょう。
適判の試験だけでは過去問が少ないですが、構造一級の試験も出題方法はとても似ているため、時間が許す限り実施すべきです。
まず、構造計算適合性判定資格者検定の過去問については、全てやっておくべきでしょう。
過去問では四肢択一のみ回答が公表されているため、筆記、穴埋めについては自力で回答を導き出す必要があります。
自力でわからない箇所は、社内で他の方に意見を聞くなどして、納得できるレベルまで回答を出しておくべきです。
また、四肢択一問題についても、正答の理由をしっかり掴んでおく必要があります。
まわりに受験経験のある方や適判員をされている方がいれば相談してみるのがいいでしょう。
次に、構造設計一級建築士試験の過去問については、近年のものから問いていくのが良いと思います。
構造一級の試験に関しては、年々問題の難易度が向上していますが、両方とも合格できた筆者としては、適判試験も難易度は同等。
時間が許す範囲で、取りくむ年度を広げていきましょう。
構造設計一級建築士の過去問は(一社)日本建築構造技術者協会(JSCA)のHPで購入できます。
また、筆記の練習として、建築基準適合判定資格者検定の過去問を行うのもオススメです。
建築基準適合判定は構造分野に特化した試験ではないため、構造分野の問題の難易度は低めになっていますが、筆記問題が主な試験のため、文章が苦手な方は取り組んでおくと良いでしょう。
建築基準適合判定資格者検定の過去問は、国土交通省のHPで閲覧可能です。
ビルディングレターなどの読み込み
(一財)日本建築センターが発行するビルディングレターなどの書類の読み込みは、実際に構造計算適合性判定でどのような点が指摘対象となるかを把握しておく意味で重要になります。
ビルディングレターだけでなく、構造計算適合性判定機関(適判機関)が出しているQ&Aを読んでおくことで、適判員の視点を知ることができ、黄色本の要点を掴みやすくなります。
筆者が暮らす大阪だと大阪府のHPに適判機関がまとめた指摘事例集が公開されています。
おわりに
筆者は試験の半年ほど前から対策を進めました。
また、それ以前に黄色本の線引きを終えていたため、黄色本の作り込みができていない方は試験の一年前から準備するくらいのスケジュール感になるはずです。
長丁場の準備が必要になりますが、試験に合格できれば構造計算適合性判定の仕事をできるだけでなく、自信にもつながるかと思いますので、今後受験をお考えの方はぜひ頑張ってください。
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