おうち選びの参考に!建物の耐震性を調べるにはまず年代を確認。目安は昭和56年(1981年)。

建築
Pocket

はじめに

こんにちは、ロア(@roa_garnet)です。

これから中古物件を購入して自分でリノベーションし、「自宅を理想の空間にしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
その中には、リノベーションで内装をキレイにできれば古い建物でもかまわないという方もおられるかもしれません。
当然、古い建物であれば購入費用が安くなり、その分を節約したりリノベーションや家具に充てることも可能です。

ですが注意が必要なのはあまり古すぎる建物の場合、耐震性に不安を抱えるという点です。

本稿では、一級建築士としてこれまで多くの古い建物の耐震性を確認してきた筆者が、中古物件の購入に際して確認すべき事項をお伝えいたします。
住宅に限らず、中古物件の購入などに際しての参考にしていただければ幸いです。

□本稿の対象読者
・中古物件の購入をお考えの方
・建物の耐震性について確認すべきことを知りたい方

建築基準法の改正

マンションであっても戸建て住宅であっても、古い建物は大地震に耐えられず倒壊する可能性が高いです。
ここでの「古い建物」というのは、昭和56年(1981年)5月31年以前に設計された建物を指します。

これは建築基準法の大きな改正に伴うものであり、昭和56年6月1日以降に設計された建物が「新耐震(基準)」、それ以前に設計された建物が「旧耐震(基準)」と呼ばれ、旧耐震の建物は現行の建築基準法に相当する耐震性能を有していない可能性があります。
また、その中でも昭和46年(1971年)以前の建物は、鉄筋コンクリート造の建物では柱の鉄筋量が少ないなど、さらに耐震性能が低いとされています。

旧耐震の建物に対しては、1995年の阪神・淡路大震災での甚大な被害を受け、「耐震診断」という方法で大地震に対しても倒壊しない耐震性を有しているかを確認する流れが加速していきました。

耐震診断とは

耐震診断は、旧耐震の建物に対して現地調査を行って建物の現状を確認し、設計図面や調査結果に基づき耐震性能を計算し、目標とする耐震性能を満足するかを確認する方法です。
耐震診断に関しては、鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、構造種別ごとに基準や指針が設けられ、計算手法がある程度確立されています。

私のこれまでの経験から言うと、旧耐震でも平屋建てや2階建ての鉄筋コンクリート造建物であれば、必要な耐震性能を有しているケースのほうが多いです。
一方、3階建て以上の場合、8割程度の建物はいずれかの箇所で、目標とする耐震性能を満足しないと考えています。
また平屋建てや2階建てでも木造や鉄骨造であれば、施工(工事)の精度が悪く、耐震性能が不足する場合も多々あります。

耐震補強とは

耐震診断を行った結果、目標とする耐震性能を満足せず、大地震時に倒壊する可能性が高いと判断された建物については、「耐震補強」を行うことにより、耐震性能を向上させる方法があります。

ただし、耐震補強の方法としては、壁を足したり、壁厚を厚くしたりという方法が多く、建物内の部屋の配置や用途に制約を受けることがあるため、設計者と建物所有者の間で補強位置の調整が必要となります。
現状の耐震性能があまりにも低い場合、建物の使い勝手を維持した耐震補強計画が難しく、耐震補強の実施が困難なケースも存在します。

ちなみに公立学校施設では、文部科学省が平成27年度(2015年度)の完了を目標に耐震化を進め、現在ではほぼ100%の公立学校の建物が所要の耐震性能を有しています。
マンションなどの住宅施設であっても自治体の補助を受けれる場合があるため、自主的に耐震補強を行っているケースも多々あります。

おうち選びに関して

これから賃貸物件への引越しや中古物件の購入をお考えの方は、以下の点を確認することをおすすめします。

  1. 建設時期がいつ頃か、旧耐震に該当しないか
  2. 旧耐震に該当する場合、耐震診断で必要な耐震性能を有することが確認されているか
  3. 耐震診断で耐震性能が不足する場合であっても、耐震補強がされているか

昭和56年6月1日以降に設計された建物であれば、現行の建築基準法に相当する耐震性能を有しているため、大地震に対する安全性は格段に向上します。
なお、あくまで基準法の改正は設計の時期ですので、昭和56年5月31日以前の旧基準で設計され、昭和57年以降に建設されているケースもあるという点には注意が必要です。
確実に新耐震の建物を選ぼうとすると、昭和60年以降くらいに建設が完了した建物になるかと思います。

なお、旧耐震の建物の所有者の方で、建物の耐震性能に不安をお感じの方は、自治体や建物の事業者などにご相談されるといいかと思われます。

リノベーションが自由にできる、内装がきれいに改装されている、立地や価格が良いといった条件から、旧耐震の建物が購入の候補になる場合もあるかと思います。
その場合は、耐震診断で目標耐震性能を満足することが確認されているか、もしくは目標耐震性能を満足するように耐震補強工事がされている建物かを確認すべきです。

加えて、耐震補強について、第三者機関にその内容が適切であることを審査されていれば、より一層安心です。
人生で最大の買い物になる可能性もありますので、購入する際は後悔のないようにしっかりと下調べをしましょう。
逆にこれらの点に注意していれば、耐震性に不安のない中古物件を見つけやすいということになります。



Pocket

タイトルとURLをコピーしました