一級建築士、資格取得のための勉強法。いつから始めるべき?勉強時間はどれくらい必要?

建築
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はじめに

こんにちは、ロア(@roa_garnet)です。

私は社会人、夫、父の役割をしながら資格学校に通い、一級建築士の資格を取得しました。
そんな私が建築に携わる若手社会人に伝えたいのは「一級建築士は早めにとっておいたほうがいいよ」ということです。

一級建築士試験の資格取得は若手社会人や学生にとってはかなり高いハードルに思え、「自分がそんな資格とれるわけない」とか「会社からとるように言われてるけど腰が重い」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
私自身がそうでしたが、腹を括って資格学校に通い始めたのをきっかけに資格取得まで突っ走り、勉強するクセもつき、その後の自信につながりました。

本稿では、妻子持ちで仕事もこなしながら、学科試験で110点をとり、一級建築士の資格を取得できた私の試験対策のノウハウをお伝えします。

□本稿の対象読者
・一級建築士の資格取得を目指される若手社会人および学生

受験資格の変更

2020年から一級建築士試験の受験資格が変更され、これまで要求されていた「実務経験」が受験時には不要となりました。
なお、合格後の資格登録には実務経験が必要条件となります。

この変更に伴い、例えば大学卒業の場合、卒業後2年間の実務経験が受験のために必要でしたが、大学を卒業してしまえば、大学院に行っていても受験ができることとなりました。
これは建築士が減少していることへの受験資格緩和の措置ですが、建築士を目指している若手社会人とっては嬉しい改正ではありません。
社会人に比べて比較的自分の時間が確保しやすい大学院生との競争が始まったからです。

例年、受験者数が25,000人程度で推移していたのに対し、制度が変わった今年は30,000人超の受験があったようです。

一級建築士試験

ここでは一級建築士試験の概要を紹介します。
「概要は知ってるからいいよ」という方は読み飛ばしていただいてかまいません。

試験は学科試験と製図試験の2段構成となっています。

学科試験の合格率が約20%、製図試験の合格率が約40%となっています。
学科試験の合格率が低いように感じますが、受験者の1/3程度はほとんど勉強せずに来ている方もいるのではないかと思います。
私が受験した際も、試験開始から間も無くして寝ている方がちらほら見られました。
ですので、実際に競争相手となるレベルでの学科試験の合格率は1/3くらいじゃないかなと思っています。

学科試験は、Ⅰ.計画(20点)、Ⅱ.環境•設備(20点)、Ⅲ.法規(30点)、Ⅳ.構造(30点)、Ⅴ.施工(25点)の5科目、合計125点(125問)の試験構成です。
これら5科目の合計点で合格が争われますが、各科目ごとに半分を超える点数を取らなければ足切りとなり、合計点が合格基準に達していても不合格となります。
なお、合格基準点はだいたい90〜95点前後で、受験者の点数に応じて設定されるようです。
正答率にして約70〜75%ですので、8割(100点)正解できれば確実に合格できます。

製図試験は、学科試験の後、大きなテーマだけが発表され、細かい設定は受験当日までわかりません。
近年のテーマを見てみると「美術館の分館」とか「健康づくりのためのスポーツ施設」などがありました。
6時間30分の制限時間で図面と計画の要点という文章を書き上げなければならず、長時間の体力勝負になります。

資格学校に入学

ここからは、私の行っていた受験対策を紹介します。
なお、私が合格したのは5年ほど前ですので、その当時の情報ということを踏まえて、参考にしていただければと思います。

まず、資格学校に通うことにしました。

自分で時間や工程の管理をしっかりして、集中して勉強できる方は良いですが、そのような自身のない方は資格学校に通うことをオススメします。
なかなか資格の勉強を始める気にならないという方も、思い切って資格学校に登録してしまうほうが良いでしょう。
1人で勉強するよりもまわりから刺激をもらえますし、他の方と自身との比較もできるため、自主的な勉強が苦手な方は絶対に資格学校に通うべきです。

資格学校は学科試験の1年近く前から年度のカリキュラムがスタートしますが、学科試験までのスケジュールを考え、計画的にカリキュラムを組んでおり、その通りに学習を進めていけば、バランスよく試験対策が可能です。
試験に向けた予行試験なども段階的に行っていただけます。
仮に独学で勉強される方であっても、1年程度前から勉強を始めるべきでしょう。

また、学科試験は独学で合格する方もおられるかもしれませんが、製図試験は独学での合格は不可能と私は思っています。
実際に、独学で合格したという方を見たことがありません。
したがって、製図試験の段階では必ず資格学校に通うことになるかと思います。

学科試験を通過した年は、製図試験までの準備期間は二ヶ月ほどしかありませんが、その短期間であっても、しっかり対策して合格されている方は多くおられます。

資格学校は社会人の方が多いので、通学制のところは土日に授業が行われることがほとんどです。
通信制のところは私自身あまり情報を持っていませんが、私のまわりには通信制で合格した方も数名おられます。
ご自身がしっかり勉強できると感じた資格学校を選ばれればよいかと思います。

学科試験対策

学科試験は、しっかりと勉強していれば確実に合格できます。
その反面、勉強不足の方は合格が難しいです。
私の感覚だと「落ちた人はちゃんと勉強してこなかったんでしょ?」という感じです。
試験の範囲がかなり広いので、勉強不足をご自身の知識と経験だけで補うのは不可能と思われます。

私の通った資格学校では、5科目それぞれに対し、テキストと問題集を各1冊、合計10冊の書籍を主に使って学習を進めました。
また、1週間に1科目の授業を行うこととなり、平日は復習予習に充てられます。

私は、資格学校に通い出した段階で長女が生まれていたので、家に帰るとなかなか集中できない環境にありました。
なので妻には申し訳ありませんが、帰宅途中のカフェなどで勉強してから帰るようにしていました。

受験期間中は仕事を8時半ごろまでに切り上げるようにして9時〜11時の2時間、カフェで復習やテキストの読み込みをし、帰宅後は食事などを済ませてから30分だけ問題集をするというリズムでした。
問題集を30分するくらいであれば、「家に帰ると集中力がきれる」という人でも無理なくできるかと思います。

個人的には、合格には1日2時間程度は勉強が必要と思っています。
資格学校に通っていたこともあり、私自身は全く勉強しなかった日は1年の間に1日か2日くらいだったように思います。
仕事をしながらの時間の確保は当然苦しい面がありますが、「この1年だけは!」という気持ちで頑張ってほしいと思います。
一度怠け癖がつくと、何年も同じペースで資格学校に通うことになってしまいます。
私の知り合いでもそういった方が何名かおられました。

私のように「ここに来れば勉強するというスイッチ」という場所を決めておけば、集中して勉強できるでしょう。
また、その間はスマホは見ないようにしましょう。
できれば電源を切っておくのが良いですが、最低でも目に入らないカバンの中などにしまっておきましょう。
ご自身で「この時間は必ず集中して勉強する」という時間を決めるのが良いかと思います。

それと隙間時間は必ず勉強するようにしましょう。
ちょっとくらい遊びたいと思う時もあるでしょうが、この1年だけ、と自分に言い聞かせて勉強に取り組みましょう。
私も生まれたばかりの長女の赤ちゃん用品を買いに行った際、妻がトイレに行っている間も小冊子を取り出して勉強していたことを覚えています(今思うとショッピングセンターでそんなことしてる大人なかなかいませんよね)。

製図試験対策

製図試験は、資格学校で1課題こなし、平日の間にもう1課題こなすという感じです。

製図試験は6時間半という長丁場ですが、時間の感覚をお伝えすると、問題文の読み込みおよび計画立案に2時間、計画の要点という文章を書くのに1時間、図面を描くのに3時間、最終チェックに30分というのを理想に私は対策していました。
図面はA2サイズ、計画立案に使うエスキス用紙もA2サイズです。

私の場合、問題文の読み込みや計画立案、文章の記述は、学科試験に引き続きカフェなどで作業していました。
カフェでやるといっても、ちゃんと時間を測って行う必要があります。

また、図面を描くのは平行定規などの製図用具を使うため、自宅でやらざるを得ません。
資格学校が職場や自宅に近い方は、資格学校で図面作業を行うことも良いでしょう。

製図作業においては、私は細い線と太い線のかき分けが苦手でした。
壁や柱は太い線、家具などの什器は細い線とかき分けが求められますが、私の場合は太さの異なる2本のペンを使って対応しました。
ペンを持ち替える時間がもったいないという講師もおられるかもしれませんが、その時間を惜しんでメリハリのない図面にするなら、持ち替えれるように早く図面を描き上げる訓練をしたほうが良いと考えています。

ちなみに製図試験は、細かい条件をクリアしていくことももちろんですが、図面の印象が合格を左右すると考えています。
そのため、構造部材はしっかりと太い線、家具などの什器は細い線と、しっかりとかき分けることで、見やすい図面を描くことを心がけましょう。

苦手なところを重点的に

学科試験においては、苦手な科目を中心に勉強することをオススメします。
得意な科目は、もともとそれなりの得点がとれるため、勉強に時間をかけても点数の伸びはあまりありません。
一方、苦手な科目は点数が低い状態からスタートしますので、当然伸び代が大きいです。

私の場合は、法規の勉強に最も時間をかけました。
法規は特異な科目で、試験への法例集の持ち込みが許可されています。
その反面、自分で書き込みをたくさんしている法例集を持ち込んでもなかなか点数が取れないという意味にもなります。
法例集はマーカーなどでの書き込みに非常に多くの時間を要しますが、そこから何がどこに書いているかを短時間でひけるように訓練が必要となり、私はこの科目に最も多くの時間をかけ、最終的には30点中27点を取ることができました、

逆に、構造については仕事でも扱っている得意分野(構造設計の仕事をしています)。
勉強は構造の授業が行われる週の予習と復習だけで、その他の時間を構造の勉強に割く必要がなく、また構造の試験が全125点中30点という高得点が与えられた科目であったことも私にとってはラッキーでした。

苦手な分野を克服することで全体の点数をあげるとともに、足切りの回避にも繋がりますので、気が乗らない苦手な科目こそ、重点的に勉強しましょう。

おわりに

社会人で一級建築士の合格を目指されている方は、日常業務をこなしながら学習を進める必要があるため、大変なご苦労があるかと思います。
資格学校に通って本気で資格取得を目指される方は、職場にその旨を伝え、ある程度の理解を得ていただくほうが良いかと思います。
その時には「必ず1年で合格するので!」という意思表示をすれば、配慮もしてもらえるかもしれません。

私の経験上、設計などの仕事をする上で、一級建築士の資格は取得して当然であり、取得してから更にどうしていくかということを求められます。
また、受験には多くの時間と体力を要するため、若いうちでかつ、独身のうちに合格してしまうのが良いでしょう。
これからの仕事の可能性を広げるためにも、若い間に資格を取得できるよう、頑張ってください!



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