会社に新規事業や業務改善の提案を求められた際、どう取り組めばいいかわからないと途方に暮れてしまう方も多いのではないでしょうか。
また、経営者の立場であっても、会社の状況を改善するために何にとり組めばいいか迷うこともあるかと思います。
実際の目的が不明確なまま、やみくもに新しいアイデアを検討したところで、ムダな努力に終わってしまう恐れがありますよね。
あなた自身の限られた時間を、やっても成果がでないムダな時間に使いたくないですよね。
この記事では、会社への新規事業や業務改善、顧客満足度の向上などを求められた際に、世界的大企業アマゾン(amazon)がどのようにとり組んでいるかを紹介します。
新しいアイデアに対する考え方が間違ってしまうと、まったく必要のないサービスを提案してしまうなど、とても効率の悪いとり組みになってしまいます。
一方で、最初にゴールを決めてしまえば、とり組むことがはっきりし、提案のプレゼンでもストーリーが明確になるので、新しいとり組みに迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の対象読者
・社内での新しい提案、新規事業の立ち上げを行いたい方
・業務改善や顧客満足度のための新しい取り組みを考えたい方
・会社の経営改善のための取り組みを検討している方
筆者の会社での悪い事例
その提案、だれが喜ぶの?
最初に、会社への新規事業の提案について、筆者の会社で実際にあった悪い事例を紹介します。
悪い事例としてとり上げていますが、実際にこのようなとり組みをされている方も非常に多いのではないでしょうか。
筆者は建築士として建築に関わる仕事に長らく携わっています。
建築では多くの技術書が発刊され、新しい技術の理解や情報の収集が求められます。
そんななか、建築における比較的新しいとり組みに関する書籍が発刊された際のこと。
会社としてはいち早くその書籍の考え方を取り入れた業務を始め、多くの依頼につなげたいとの意図があり、筆者の後輩がその業務に関するPR資料の作成を任されました。
会社に任されたということで、彼は書籍の理解に努め、PR資料の作成を進めましたが、その資料を見たまわりの印象は「これ、誰にメリットがあるの?」といった冷ややかなものでした。
問題は不明確なゴールとターゲット
筆者の後輩が作成した資料の問題点ははっきりしていて、ターゲットが不明確でゴールが定まっていないことでした。
ただひたすらに「新しい書籍の考え方をとり入れた業務を提案する」という「手法」にのみ集中していたため、どういったニーズに応えるかという「目的」の検討が不十分だったのです。
そのため、PR資料でも「手法」の紹介ばかりで、社会的ニーズや会社側のメリットなどはあと付けのようなもの。
こうなってしまうと、顧客にも同僚にも響かない提案になってしまうのは目に見えているため、彼自身の貴重な時間がもったいない形で消費されることとなってしまいます。
研究職、技術職は特に注意
研究職や技術職の方は特に注意が必要です。
筆者の会社の例でも紹介したように、技術系の場合、新しい技術や自分がやってきた研究をどのように市場に落とし込むかという手法ベースでの考え方になりがちです。
そうなると、社内で提案した場合に「それは誰にメリットがあるの?」、「顧客のどんなニーズに応えれるの?」、「従来の別の方法でいいんじゃないの?」と、疑義がたくさんあがることが予想されます。
本来、研究は社会的なニーズや問題をとらえ、そこからスタートすべき。
そうすると、社内での提案に際しても明確なゴールをお伝えできるはずです。
ですが、研究を長くされている方などは、顧客や市場のニーズではなく、自身の探求のための研究になってしまうケースも多々あります。
研究職や技術職の方は、顧客にとっても難しくわかりづらいものをとり扱うケースも多いので、手法ベースの提案になっていないか、顧客が置き去りになっていないかをよく考える必要があります。
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アマゾンでのワーキング・バックワース
では、世界的な大企業となった今も新しいサービスを提供し続けるアマゾンは、どのように新規事業を作っているかを見ていきましょう。
書籍「amazonのすごい人事戦略」から、その方法を紹介していきたいと思います。
アマゾンではこの方法を社員全員に共有することで、世界的な大企業となった今も毎年の売上高を20%以上伸ばしつづているため、ぜひ参考にしてみてください。
アマゾンでは「ワーキング・バックワース」という手法が徹底されています。
これは、最初にニーズをつかんで、そこから逆算して何をすべきか考えるというもの。
外部へのサービスであれば顧客、業務改善であれば職員が、どのようなものを求めているかを把握し、それを達成するためにすべきことを計画していくのです。
多くの人が①やってみよう→②実行→③これだけできた、という流れで新しいとり組みを進めているのではないでしょうか。
そうなると、「これだけできた」は顧客などのニーズに対して十分なのか不十分なのかわからないものになってしまいますよね。
アマゾンではこの①から③の順序が異なります。
まず①ゴールを決め→②ゴール達成のために何をすればいいか考え→③最後に実行です。
そうすることで、実行したあとにゴールに達成できたかが明確になり、またゴールもあと付けのものではなくなりますよね。
この方法は、言われれば当然その方がいいと感じますが、実際にできている方は少ないのではないでしょうか。
最初にゴールを決めるメリット
では、この「最初にゴールを決める」ことのメリットをいくつか紹介しましょう。
とり組み方を変えるだけで、ゴールが不明確なまま、やみくもに新しいアイデアを考えるのとは雲泥の差がでますよ!
計画倒れにならない
先に紹介した「これをやってみよう」というアイデアから、新しいとり組みを考えた場合、計画倒れになる危険性が高いです。
筆者の会社での事例でもお話ししたとおり、「これをやってみよう!」、「この手法を使って新規事業を考えて!」というのは、発案者主体の提案になってしまいますよね。
結果的に「それニーズあるの?」ということになってしまいます。
一方で、最初にゴールやニーズが明確になれば、「それニーズあるの?」という計画倒れにはなりません。
もちろん、ゴールの設定が不適当だったり、ニーズの把握が不十分であれば問題ですが、そこさえしっかりとしておけば、あとはゴールにむかってつき進むだけです。
提案プレゼンのストーリーが明確に
先の事例でも紹介したように、手法、方法から考えた新しい事業やアイデアは、説得力のある提案資料の作成がとても難しくなります。
「なんのためにそれをやるの?」と聞かれた際に、「この手法を使いたいからです!社会的ニーズがあるかはわかりません!」とは言えないですよね。
ニーズの部分に対してこじつけ感が強い提案になってしまうと、PR資料のストーリーにも違和感がでてしまいます。
ですが、最初にニーズを把握し、ゴールを設定しておけば、プレゼンのしかたはいくらでも考えられますよね。
「こういう社会的なニーズを満たすためにこのような事業を提案します」とはじめに言えば、提案された側も理解しやすいです。
反対に、これまでの背景や手法を説明したあとで、「この方法を使ってこういったニーズに応えます」というPRもありですね。
ゴールが明確になったうえでの提案は、ストーリーが明確で、作り手にとっても聞き手にとってもメリットばかりです。
むりやりストーリーを作ったうえに、何を伝えたいのかわからない資料を作るのに時間をムダにするのであれば、ニーズを把握してゴールを設定するのに時間をかけるべきです。
ちなみに聞き手が理解しやすいプレゼンの方法は、以下の記事でも紹介しています。
こちらはプレゼン資料の作り方に関する具体的な方法を紹介していますので、気になる方はチェックしてください。
あなたの評価も右肩上がり!?
顧客のニーズなど、目的がはっきりとした提案は、聞き手にもとてもわかりやすく、心に響きやすくなります。
そのため、あなたからの提案を受けた上司などに対して「しっかりと考えられてるな」という印象を与えることができます。
提案、プレゼンに対してかける時間が同じであっても、ゴールが明確になっているか否かは、聞き手に対するあなたの印象を大きく変えてしまいます。
「この人はしっかりと社会ニーズを考えて計画できる人だな」という印象を与えて、あなた自身の社内での評価向上に直結することは間違いありません。
もしあなたが上司などから新しい提案を求められたとき、「上から言われてもやる気が出ないな」と、力をかけずにこなしてしまうと、プレゼンにもその姿勢が表れてしまいます。
そうなると、「目的がよくわからない。この人は全然考えてないんだな。」という印象になってしまい、せっかく時間をかけた提案があなたの評価を下げることにもなりかねません。
やってみるのは「ゴール、目的を最初に決める」というふうに手順を変えるだけ。
これだけであなたに提案力が身につき、聞き手にとって納得度の高いプレゼンテーションが可能となります。
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重要なのはゴールの決定に時間をかけること
ゴールの方向は間違えてはならない
ここまで、会社での新しい提案では、顧客のためであってもコスト削減のためでも業務改善のためであっても、ゴール、目的を最初に決めるのが大切だと申し上げてきました。
では、このために重要なのは何かを考えてみましょう。
それは、最初に設定したゴールが適切なものであることです。
最初に設定したゴールが不適当であれば、間違ったゴールに対して労力をかけてしまうこととなりますよね。
そのため、最初に行う「ゴールを決める」というポイントに時間をかけるのが重要になってきます。
顧客満足度の向上につながるものであれば顧客が何を求めているのか、業務改善であればなんのために改善すべきことなのかを、しっかりと時間をかけて考えなければなりません。
時間的余裕があるならば、アンケートやヒアリング、市場調査のリサーチなども行うのもよいでしょう。
ちなみにゴールの設定については、以下の記事も参考になります。
こちらの記事では、アイデアを捻出するための手法を紹介していますので、ゴールを間違えないためのアイデアを考えたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
マーケティングにおける戦略と戦術の考え方
このあたりの考え方は、森岡毅さんの著書「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」のなかで、面白い例えが紹介されていました。
森岡毅さんは、P&Gを経て当時人気が低迷していたUSJに2010年に入社し、顧客のターゲットの変更など、社内での大改革を起こし、USJの人気回復にマーケターとして大きく貢献された方です。
森岡さんは仕事での目標やそれを達成するための方法を「戦略」と「戦術」と表現されています。
簡単にいうと戦略は「達成すべき目的」、戦術は「それを達成するための方法、手段」です。
ベストなのは戦略が正しく、戦術も正しいケース。
東京という目的地(東京に行くというのが達成すべき目的)に対して、新幹線や飛行機という手段をとるというのがベスト。
戦術が弱いと、東京に向かって自転車で行くようなもので、その場合は資金を加えて新幹線や飛行機という戦術のアップグレードが求められます。
大変なのは戦術(手段)は正しいけれど、戦略(ゴール、目的)が誤っている場合。
例えば、資金をかけて飛行機に乗ったのはいいけど、向かったのは本来のゴールの東京ではなく韓国など、方向がまったく違うというケース。
会社での提案となると、上司などに納得してもらい、人材や資金を使ったけど、達成すべき目的が社会ニーズからまったくずれていたという状態になりますね。
ゴールや目的の設定に時間をかけるべきなのは、この例でご理解いただけたかと思います。
ですが、ゴール、目的を正しく設定できれば、あとはそれに向かってつき進むだけ。
マーケティングでのゴールの考え方などは、「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」でかなり詳しく、具体例も交えながら紹介されていますので、興味のある方はぜひ手にとってみてください。
おわりに
会社での新規事業などの提案は、ゴールやターゲットが明確であればあるほど、提案された側にとって納得度の高いものとなります。
その提案に同じ時間をかけたとしても、ゴール、目標が不明確なものであれば、社内での承認を得ることは難しく、あなた自身の評価の向上にもつながりにくいでしょう。
せっかく時間をかけるのであれば、明快なストーリーを練った提案を行い、提案の場での疑義の嵐は避けたいですよね。
そうすることで、あなた自身の評価の向上にもつながるので、もし会社での提案を求められた場合には、最初にゴールを決めることを意識し、そこに時間をかけるように努力しましょう。
なお、今回紹介した書籍「amazonのすごい人事戦略」は、アマゾンジャパンの立ちあげのメンバーとしてアマゾンに入社し、ディレクターにまでなった佐藤 将之さんが執筆されています。
書籍のタイトルは「人事戦略」となっていますが、人事に携わる人ばかりに向けた内容ではありません。
人事と聞いてまっさきに思い浮かぶ「社員の採用」はもちろん、本稿で紹介した「新しいことを考える、提案する際のポイント」や「目標設定や評価の方法」、「採用した社員の育成」や「リーダーを作るための研修」など、幅広い意味での人事のポイントを取り上げています。
また、森岡毅さんの著書「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」では、社会ニーズをどのように探求するかなど、マーケティングの基礎を学ぶことができ、多くの社会人にとって役立つ知識を習得することができます。
いずれの書籍も、会社で働くにあたっては読んで損のない一冊となっていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。